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事例集
内縁の夫と住所が別だが同居していたと主張するものの棄却された事例
公開日: 2020年9月17日 更新日:2020年9月17日
事案概要
請求人は、厚生年金保険の被保険者であり、かつ厚年法による老齢厚生年金(以下、単に「老齢厚生年金」という。)の受給資格期間を満たした者(以下、単に「受給資格期間を満たした者」という。)であるA(以下「亡A」という。)が平成○年○月○日に死亡したので、平成○年○月○日(受付)、厚生労働大臣に対し、亡Aの事実上の妻であるとして、遺族厚生年金の裁定を請求した。
争点
請求人が亡Aの死亡当時、亡Aにとって生計を維持した配偶者(事実婚関係にある者)と認めることができるか。
結論
判断理由
経済的援助についても、請求人は前記のとおり申し立てているが、それは申立てのみであって、これを裏付ける資料がなく、請求人は、H○年○月から毎月給料日に生活費として20万~25万円手渡された旨述べているが、亡Aは、平成○年○月○日に、○○籍のBと婚姻し、平成○年○月○日付で同人と離婚しているが、この婚姻期間中にも上記のように毎月手渡しで20万円から25万円を請求人に提供していたと認定するには合理的な説明と客観的な裏付資料を要すると解すべきところ、そのような説明も資料もないのである。
そして、亡Aと請求人との間で、社会通念からして、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があったと認めるに足りる資料はない。
また、病院関係者は、請求人を「内縁の妻」「友人」等記載しているが、これは病院側が相対的に見た認識を記載しているのであって、内縁の妻と認めたわけではなく、これをもって、請求人を内縁の妻であると認めることはできない。また、上記1の(12)で認定したように、病院関係者は、亡Aの診療に係るキーパーソンをCとしており、請求人ではない。
この点を含め、本件で提出された全ての資料を精査しても、社会通念上、亡Aと請求人との間で、夫婦と同様の共同生活が営まれていたとの事実を認めるに足りる事情があったとも認めることはできないといわざるを得ない。なお、請求人は、亡Aの位牌、仏壇及び骨つぼ等を祀っていると主張するが、その主張事実を併せても、請求人と亡Aとの間に、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があり、かつ、社会通念上、その合意に基づいて、夫婦の共同生活と認められる事実関係があったと推認するには足りない。
本案件のポイント
本案件は、内縁関係で、同居していたものの住民票の住所が別という事例になります。なお、住民票上の住所が別の事例について、生計維持関係が認められるには、次の(ア)、(イ)のいずれかに該当する必要があります。
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている
が、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(a) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(b) 定期的に音信、訪問が行われていること
同居していたけれども、住所が別と案件については、内縁関係であったことの証明はもちろんのこと、生計を一つにしていた、同居していたということについて証明資料を多く求められます。
本案件については上記要件を証明できる資料がほとんどなかったこと及び「内縁の妻は同居していない」という、そもそもの同居事実が疑われる供述(あるいは何らかの資料)があったことから、棄却されたと考えられます。
このような案件では、連名の郵便物が欲しいところですが、なければ最低でも故人宛の郵便物(消印のあるものが望ましい)等の同居の事実が推認できる資料が欲しいところです。
その他、
・「内縁の妻は同居していない」との供述(あるいは何らかの資料)があること
・「給料日に生活費を20万円から25万円手渡しでもらっていた」と主張があるが、それを裏付ける資料はない
・病院関係者が故人の診療に係るキーパーソンを請求人ではなく、Cとしてる。
といった事実がマイナス要因として挙げられます。
カテゴリ:
2020年9月17日 16:56