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事実婚(内縁)の妻は、遺族年金をいつまでもらえるか?

公開日: 2020年1月12日
更新日:2020年5月24日


「もし、遺族年金をもらえるようになった場合、遺族年金はいつまでもらえますか?」

「事実婚(内縁)だと、遺族年金をもらえる期間は短いのですか?」

というようなご相談が多いので、

今日は、「事実婚(内縁)の妻は、遺族年金をいつまでもらえるか?」を解説します。

1.遺族厚生年金の失権事由


お二人の間に、子供さんがいない状況ですと、遺族厚生年金が対象になりますので、遺族厚生年金の失権事由を確認します。

法令上どう定められているかというと。

【厚生年金保険法第63条】

遺族厚生年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
  • 1.死亡したとき。
  • 2.婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
  • 3.直系血族及び直系姻族以外の者養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となつたとき。
  • 4.離縁によつて、死亡した被保険者又は被保険者であつた者との親族関係が終了したとき。
  • 5.次のイ又はロに掲げる区分に応じ、当該イ又はロに定める日から起算して五年を経過したとき
  • イ 遺族厚生年金の受給権を取得した当時三十歳未満である妻が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の受給権を取得しないとき 当該遺族厚生年金の受給権を取得した日
  • ロ 遺族厚生年金と当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する妻が三十歳に到達する日前に当該遺族基礎年金の受給権が消滅したとき 当該遺族基礎年金の受給権が消滅した日

原則として、上記1の通り、事実婚(内縁)の妻が亡くなるまで、遺族厚生年金は支給されます。

しかしながら、上記2~5に該当する場合は、該当したときに失権します。

 

※注意点※
  • ・「2の婚姻をしたとき」については、事実婚関係の相手ができたときも含まれます。婚姻しなくても、事実婚関係の相手ができたときは遺族年金は失権することになります。

    ・「4の離縁」ですが、ここでの離縁は「養子縁組の解消」のことを指します。

    そのため、結婚前の籍に戻る「復籍」、旧姓に戻す「復氏」、亡内縁の夫との縁を切る「姻族関係の終了」は、これに該当しませんので、遺族厚生年金は失権しませんので、ご安心ください。

    俗に言う死後離婚をしても遺族厚生年金は失権しません。

    ・5ですが、二人の間に子がいない妻(内縁でも同じ)が30歳未満の場合は、5年間の有期給付となります。

2.戸籍上の妻より遺族年金がもらえる期間は短いか


変わりません。

上記1に示した失権事由は、戸籍上の妻でも、事実婚(内縁)の妻でも同じです。

3.内縁の妻が65歳になると遺族年金が大幅に減額となる場合があります。


大幅に減額となる場合は、2つの事が想定されます。

1つは、内縁の夫が亡くなった時に、40歳から65歳未満の内縁の妻が遺族厚生年金を受給し、中高齢寡婦加算(令和元年度は、年額585,100円)が加算されている場合、65歳で中高齢寡婦加算は終了となります。

人によっては、遺族厚生年金よりも中高齢寡婦加算の金額の方が高い人もいると思いますが、65歳になると、年額585,100円がなくなることになります。

月額換算で約5万円弱もなくなるので、遺族年金が大幅に減ったと思われるでしょうが、これが原因です。

ただし、昭和31年4月以前生まれの方で、中高齢寡婦加算を受給していた人については、65歳以降は経過的寡婦加算を受給することができます。※経過的寡婦加算の金額は、妻(事実婚を含む)の生年月日により、異なります。

2つめは、65歳以降は、自分の厚生年金と遺族厚生年金とで調整が入ります。この調整が入ることで、遺族年金が減る場合があります。

4.まとめ


いかがだったでしょうか。

以下、ポイントをまとめます。

・事実婚(内縁)の妻は、原則、亡くなるまで遺族厚生年金を受け取れる。ただし、結婚(事実婚を含む)、養子、離縁、30歳未満で5年の有期給付の場合は、途中で失権する。

・戸籍上の妻でも事実婚(内縁)の妻でも失権事由は変わらないので、事実婚(内縁)の妻の方が短いということはない。

・年額585,100円の中高齢寡婦加算は、65歳まで。

65歳未満の事実婚(内縁)の妻で中高齢寡婦加算を受給している方については、65歳になり、加算が終了すると遺族年金の金額が大幅に減りますので、国民年金を納付しておいた方が良いでしょう。

この記事を書いた人

遺族年金専門の社会保険労務士 三浦康紀 アルテユース社会保険労務士事務所 代表

遺族年金専門の社会保険労務士

三浦 康紀
アルテユース社会保険労務士事務所代表

全国47都道府県の方から累計2,000件以上の遺族年金相談に対応してきた遺族年金専門の社会保険労務士。遺族年金代行手続きをサポートした案件の受給率は、96.2%。
「あなたに遺族年金を届ける」がコンセプト。

担当した解決事例

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