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相続放棄すると遺族年金もらえない?遺族年金もらうと相続放棄できない?

公開日: 2020年5月24日
更新日:2022年4月26日

「相続放棄すると遺族年金は受け取れなくなるのか?」

反対に、

「遺族年金を受け取ると相続放棄できなくなるのか?」

夫には多額の借金があったので相続放棄するが、遺族年金は受け取りたい。

遺族年金は受け取りたいけど、夫が残した多額の借金を引き継ぐことになるのは困る。

このような、「相続放棄と遺族年金の関係」については、とても多く寄せられるご相談なので、解説したいと思います。

1.遺族年金は相続財産か?



法律上、遺族年金は「年金受給権」という遺族自身が持つ固有の権利に基づいて受給するもので、「相続財産」には含まれません。

2.相続放棄すると遺族年金は受け取れなくなるか?


上記1で説明したように、遺族年金は「相続財産」という扱いではないため、相続放棄をしても遺族年金を受給することは可能です。

なお、未支給年金も相続財産には含まれないので、相続放棄をしても受け取ることができます。

 


大阪家庭裁判所昭和59年4月11日審判遺族年金と相続放棄

厚生年金保険法58条は、被保険者の死亡による遺族年金は、その者の遺族に支給することとし、同法59条で妻と18歳未満の子が第1順位の受給権者としているが、同法66条で妻が受給権を有する期間、子に対する遺族年金の支給を停止すると定めている。そして、妻と子が別居し生計を異にした場合でも分割支給の方法はなく、その配分の参考となる規定はない。厚生年金法は、相続法とは別個の立場から受給権者と支給方法を定めたものとみられ、妻が支給を受けた遺族年金は、同人の固有の権利にもとづくもので、被相続人の遺産と解することはできない。


最高裁平成7年11月7日判決未支給年金と相続放棄

国民年金法19条1項は、「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と定め、同条5項は、「未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。」と定めている。右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。

3.遺族年金を受け取ると相続放棄はできなくなるのか?


民法921条1項では、「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、相続を承認したとみなす」という規定があります。

「亡くなった夫の遺族年金を請求しようと思っているが、夫には多額の借金があったので相続放棄する予定。でも、遺族年金を受け取ることで相続放棄できなくなって、多額の債務を負うはめになるのは困る。」と、不安の方はいると思います。

しかしながら、前述した通り、遺族年金は相続財産にはあたりません。

そのため、遺族年金を受給したとしても、相続財産の全部または一部を処分したとはみなされないため、相続放棄が可能ということになります。なお、未支給年金も同様です。

相続したくないけど、遺族年金及び未支給年金だけは受け取るという行為は可能となります。

まとめ


遺族年金は遺族自身の固有の権利に基づき受給するもので、相続財産には含まれない為、相続放棄をしても受け取れます。
また、遺族年金を受け取ったとしても、相続放棄をすることは可能です。
※未支給年金も同じ。

 

この記事を書いた人

遺族年金専門の社会保険労務士 三浦康紀 アルテユース社会保険労務士事務所 代表

遺族年金専門の社会保険労務士

三浦 康紀
アルテユース社会保険労務士事務所代表

全国47都道府県の方から累計2,000件以上の遺族年金相談に対応してきた遺族年金専門の社会保険労務士。遺族年金代行手続きをサポートした案件の受給率は、96.2%。
「あなたに遺族年金を届ける」がコンセプト。

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