事例集
内縁の妻が生活保護を受給していた為、生計維持関係が認められなかった事例
公開日: 2020年4月 8日
更新日:2020年4月 8日
平成26年(厚)第20号 平成26年9月29日裁決
主文 本件再審査請求を棄却する。
事案概要
請求人は、特別支給の老齢厚生年金の受給権者であったAが死亡したので、厚生労働大臣に対し、亡Aの事実上の妻であるとして、厚年法の規定による遺族厚生年金の裁定を請求したが、厚生労働大臣は、請求人に対し「受給権者(A)の死亡当時において請求者(B)が受給権者によって生計維持していたものとは認められず、遺族厚生年金を受けることが出来る遺族に該当しないため。」として、遺族厚生年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という)をした。請求人は、原処分を不服として、審査請求を経て、再審査請求を行った。
争点
請求人が亡Aの死亡当時、亡Aにとって生計を維持した配偶者(事実婚関係にある者)と認めることができるか。
結論
亡Aと請求人との関係をもって、いわゆる内縁関係とみることはできないのであって、請求人が亡Aと婚姻はしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者に当たるとはいえず、また、請求人が亡Aによって生計を維持した者に該当するとはいえないことから、原処分は妥当であって、これを取り消すことはできず、本件再審査請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり裁決する。
本案件のポイント
本案件は、内縁関係で、住民票の住所が別で、住居も別という事例になります。住民票上の住所が別の事例について、生計維持関係が認められるには、次の(ア)、(イ)のいずれかに該当する必要があります。
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている
が、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(a) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(b) 定期的に音信、訪問が行われていること
本案件について、請求人は生計維持関係にあったと主張していますが、請求人が生活保護を受給していたことが最大のネックとなりました。
【社会保険審査会裁決より抜粋】
『生活保護費は、請求人及びCの生活保持のために支給されていたのであり、現に、亡Aが死亡する前後も、請求人は、生活保護費を受給し続けていたのであるから、請求人は、亡Aの経済的援助により生計を維持していたと認めることは相当ではなく、上記認定の(イ)にも該当するとみることはできない。』
内縁の夫の経済的援助により生計を維持されているのではなく、生活保護により生計を維持されていると判断される可能性があります。
本件の場合、亡Aは、脳梗塞で平成○年○月○日から同月○日まで入院しているところ、請求人は、上記1の(5)アで認定したとおり、亡Aをワンルームマンション(注:平成○年○月○日に転居した○○○○号と推認される。)に引っ越しさせ、身の回りの世話等の為、亡Aの所に通いながら3人で住む為の家も探した結果、請求人とCは、○○町の家に平成○年○月○日に転居しているが、亡Aは、同年○月○日に転居した○○○○号室で、同年○月○日頃(推定)、虚血性心疾患(推定)で死亡している。ここからみるに、請求人及び亡Aは、認定基準アでいう「現に起居を共にしていた」とはいえない。
また、請求人は生活保護を受けており、上記1の(6) で認定したとおり、離婚直後から、亡A死亡時においても、請求人が60歳に到達する前月までの期間、国民年金保険料の法定免除を受けている。請求人は、「脳梗塞で引き取って以後は○か月余り、Aさんの年金と私の保護費で生計は一緒でした。もし途中で亡くなっていなければ、今もこの○○町の家で面倒をみています。」と述べているのであるが、生活保護費は、請求人及びCの生活保持のために支給されていたのであり、現に、亡Aが死亡する前後も、請求人は、生活保護を受給し続けていたのであるから、請求人は、亡Aの経済的援助により生計を維持していたと認めることは相当ではなく、上記認定のイにも該当するとみることはできない。
以上を総合して見ると、亡Aと請求人の関係は、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること及び社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在することが必要とされる内縁関係には当たらないといわざるを得ない。