事例集
離婚後も同居していた住民票別住所の元妻が、遺族年金の受給を認められた事例
公開日: 2015年8月 8日
更新日:2018年12月13日
■平成23年(厚) 第1305号
【主文】
厚生労働大臣が、平成○年○月○日付で、再審査請求人に対し、遺族厚生年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。
【本件の問題点について検討し、判断する】
戸籍上の夫婦でない者が、法第3条第2項にいう事実上婚姻関係と同様の事情にあった者であると認められるためには、
① 両当事者間に社会通念上婚姻共同体と認められる関係を形成し、維持しようとする合意があること
② 社会通念上婚姻共同体としての生活と認められる事実関係があること
② 社会通念上婚姻共同体としての生活と認められる事実関係があること
の二要件が具備されていなければならないと解するのが相当であるところ、本件の場合、亡Aの死亡当時における同人と請求人との関係は、①②のいずれの要件についてもそれを満たしていると認めることができる。
すなわち、請求人と亡Aは、昭和○年○月○日に協議離婚し、その後、両名は婚姻することなく亡Aは平成○年○月○日に死亡したが、平成○年ころ、両名は話合いをして再度夫婦としてやり直すことを決意し、
①請求人は夫婦の居所としてa宅を購入したこと、
②亡Aはa宅に居住し、その庭にあったプレハブの事務所で建設会社を経営し、請求人は本件店舗を経営する等の目的で平日は○○に居住し、週末等にはa宅に帰宅して亡Aと生活を共にしたこと、
③請求人が経営する本件店舗の利益だけでは住宅ローンを含めた請求人の生活費を賄うことはできず、亡Aは毎月○○万円の生活費を請求人に継続して支給していたこと、
④昭和○年○月○日に亡Aを本会員、請求人を家族会員とするjカードが作成され、両名が離婚した後の平成○年○月○日に、同カードはゴールドカードに切り替えられたが、亡Aを本会員、請求人を家族会員とする関係は亡Aが死亡するまで変わらず、両名のカード利用による代金決済は一括して亡A名義の銀行預金口座から口座振替されていたこと、
⑤請求人と亡Aは住民票上の住所を異にしていたが、請求人がa宅にも生活の本拠を置いていたことを示す年賀状、各種領収証等の具体的な書類が多数存すること、
⑥請求人と亡Aが離婚後も実質的な夫婦として生活を共にし、B、Cの二子及びその家族等とも交流をしていたことが窺えること、
⑦請求人と亡Aには再婚するという明確な意思があったが、前記3の(2)に記載したような事情から再婚は請求人が65歳に達してからとされ、その前に亡Aが急死してしまったこと、
その他本件手続の全趣旨を総合すれば、前記①及び②の要件が満たされていることは明らかである。
以上によれば、本件にあっては、請求人と亡Aとの間に、社会通念上婚姻共同体と認めるに足る夫婦としての共同生活を成立させようとする合意があったものと評価でき、また、そのような共同生活と認め得るような事実関係の存在も認めることができる。
したがって、請求人は、亡Aの死亡当時、同人と事実上婚姻関係と同様の事情にあった者と認められるから、請求人に遺族厚生年金を支給しないとした原処分は取消しを免れない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。